possible brain と possible qualia

R. P. Stanley は1999年の論文で possible brain と possible qualia という言葉を使っている。

possible brain とは、この宇宙で実現可能な全ての脳状態のこと。そして possible qualia とはそうした実現可能なそれぞれの脳状態が体験する主観的な体験のこと。

僕は、この概念で記述されるような観点において中心になってくるような問題をこそ、まさに知りたいと強く思う。

例えば
この宇宙の中で実現可能な快感には、限界というのはあるんだろうか?有性生殖は愛を、そしてオルガズムを与えるけど、もっとすごい快楽というのもありえるんだろうか?覚せい剤以上のレベルの快楽を感じ続けて生きるような生物はありえるだろうか?

僕達人間が体験する苦しみは、この宇宙で可能な体験のレンジの中で、いったいどれぐらい悲惨なものだろうか?もっと恐ろしい苦しみもあるだろうか?

僕は、ハードプロブレムの答えそのものよりも、その先にある、こうした問題の答えをこそ知りたい。
なぜならあらゆる possible qualia の位置づけの詳細、つまりクオリア空間の地図のようなものこそが、ある意味でこの世界の本当の地図と言えるものだからだ。
それは近い将来、人間が人間の脳構造の改変に立ち入り始めたとき、日常レベルで必要とされる重要な情報となってくるだろう。

文献

  • Stanley R.P. "Qualia space" Journal of Consciousness Studies, Volume 6, Number 1, 1999 , pp. 49-60(12)