ソラリスの陽のもとに

読んだ。読み始めたきっかけは、宇宙人もののSFにあまりに素朴なストーリ(というか正確にはあまりに人間的すぎる宇宙人の設定)しかない状況に嘆きつつネットを検索していたら、スタニスワフ・レムのこの作品が薦められていたから。

50年前の作品だけど普通に読めた。おもしろかった。一応ハードSFという部類に入るらしいが、情報デバイスも遺伝子改変も出てこないので、なんとも牧歌的な物語と思えた(特に物語中で、宇宙ステーションの通信装置で真空管が使われていたのには時代を感じた。とはいえ物語中で明らかに非現代的だと感じたのは唯一この部分だけだった)。

この作品の一番大きな特徴は、宇宙的知性が完全に非人間的な知性として描かれている点だ。その知性体というのはソラリスという星の「海」(星全体を覆っている流体)なのだけど、それは理解不能で交流不能、そして支配・被支配といった文脈も通じず、闘争・協調といった関係性も共有できそうにない、そういう完全に理解不能な・異質な、しかし人間よりはるかに優れた情報処理能力を持つ存在として、宇宙的知性が描かれる。

こういう存在はとても怖い。この感覚はどことなく昆虫を見ているときの感覚と似ているかもしれない。

しかし知性というものについてよく考えたなら、異なる知性というものは必然的にこういうものになるだろう。僕達の未来、つまりポスト・ヒューマン、というのも、こうした「今の僕等からは完全に理解不可能な何者か」となるだろう。