脳構造をグラフ構造へ変換する - コネクティビティ・マトリックス

脳内での空間的に離れた二地点間での接続の強さを行列の形にしてあらわす方法がある。つまり脳の状態を数学的構造へと抽象化する方法である。数式で書くとこんな感じ。


\Large CON(X) =\large\left(         \begin{array}{c.cccc}&1&2&\cdots&n\\         \hdash1&a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\         2&a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\         \vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\         n&a_{n1}&a_{n2}&\cdots&a_{nn}\end{array}\right)


この行列の大きさは、領域分けの精細さに応じて、小さくなったりとてつもなく大きくなったりする。仮にニューロンひとつひとつを単位にすれば1000億行×1000億列もある大きなマトリックスになる。接続の強さを色にして描くとこんな感じ。

この方法が取っている抽象化のレベルは、素粒子物理学のモデルが取っているスタンスよりはラフだが、社会科学のモデルが取っているそれよりは精密だ。こうした中間的なレベルで行われる人間の抽象化からは、いったいどんなことが出てくるのだろうか。

比較接続学なんてものがもし出てきたら(というかきっと出てくるのだろうけど)、僕ら一人一人の違いは行列の中ではどう表現されるだろうか。また僕ら一人一人が成人へと成長していく段階を、色つきの正方形の変化過程として映像化してみたら、それはどんな動きを見せるだろう。見てみたい。

参考リンク

ブログ

"ヒトの脳内ネットワークをグーグル的に調べ尽くすには?" 脳とネットワーク/The Swingy Brain 2007年7月02日
"脳のニューロンの結合関係を網羅的に記述するコネクトーム(connectome)" pooneilの脳科学論文コメント 2007年12月06日

論文

Sporns O, Tononi G, Kötter R. "The human connectome: A structural description of the human brain." PLoS Comput Biol. 2005 Sep;1(4):e42.

百科事典

Olaf Sporns (2007) "Brain connectivity". Scholarpedia, 2(10):4695