クオリア空間上のトラジェクトリ

神経科学(科学)、人工知能研究(工学)、心の哲学(哲学)、と様々な方面からクオリアに関する議論が行われているが、僕はその中でもクオリアに対する数学的なアプローチを持つ研究に惹かれる。

特にクオリア空間とか現象空間とかと呼ばれる、主観的な意識体験の領域を記述するために提案されている、色々な数学的構造についての研究に一番興味がある。

哲学上のややこしい(またはピントはずれな)議論は無視できる

こうした議論はすぐ哲学上のゴチャゴチャした議論に巻き込まれてしまいそうだが、実際はクオリア空間の話に関しては別に哲学的議論は無視してもかまわない(と思う)。

というのも世界を抽象化するために用いられる数学モデルは、オブジェクトの間の関係性については言及するが、モデル中に現われるオブジェクトが現実世界においてどういった存在様式をとっているのか、といった類の問いからは基本的に自由だからだ。

だから物的一元論者は物的一元論的に式を解釈すればいいし、性質二元論者は性質二元論的に数式を解釈すればいい。

トラジェクトリ


クオリア空間の定式化のしかたにもよるのだろうけど、Tononiの構成の仕方だと、僕らの意識的人生というのは、クオリア空間中の一本の(または細切れの)軌跡(の集まり)になる。

あまり活発ではない

とはいえ残念なことにこうした方向性の研究はあまり活発ではない(というかほとんど研究されてないようだ)。これからの発展に期待。

リンク

Giulio Tononi "An information integration theory of consciousness" BMC Neuroscience 2004, 5:42
  ウィスコンシン大学所属の精神科医Tononiの2004年の論文。

A Universe Of Consciousness How Matter Becomes Imagination

A Universe Of Consciousness How Matter Becomes Imagination

  同 Tononi(とEdelman)の2000年の著作。この本の13章がクオリア空間についての説明に充てられている。

Stanley, Richard P. (1999). Qualia space. Journal of Consciousness Studies 6 (1):49-60
  MITの応用数学の教授Stanleyによる1999年の論文。